033:逸(文乃)

渾身のキックがゴールを右に逸れPK戦は終わりを告げる
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2015.4月 うたの人「神」

遅すぎるあの軽トラの座席にはきっと神様が乗っているのだ





「うたの人」2回目の参加です。お題は「神」。前回参加の時の「キス」もそうでしたが、これも難しいお題でした。

 私は運転が下手なのですが、時々、そんな私でも驚くほどゆっくりの車に遭遇します。多くは高齢ドライバーのようですが、急いでいる時はかなりイライラします。この道は50km制限なのに、前にいる車は30kmで走ってるよ、早くして…。なんて思ってしまいます。
 先日、用事があって田舎道を長距離運転している時にも、遅い軽トラが前を走っていました。ああ、もう…としばらくイライラしていたのですが、ふと「これは、私がスピードを出しすぎないように、神様がこの遅い車を前に走らせているのだ!」と思いつきました。もちろんそう信じているわけではないのですが、そう考えるとなんだか少し気が楽になって楽しくなり、神様が私のためにスピードを落としているのならしょうがないなあ、という気持ちになりました。
 慣れない道だけど、前を走っているあの車についていけば大丈夫。そう思いながら車を走らせていると、神様を乗せた軽トラは右に曲がって行ってしまいました。ああっ、神様〜!

 そんなことを歌にしようと思いましたが、ちょっと舌足らずになってしまい、0票を覚悟で歌会に出詠しました。予想外に票を頂き、11席に入ってびっくりしています。票を入れてくださった皆様、素敵な評を書いてくださった皆様、ありがとうございました。
 いただいた評を見ていると、いくつかの広がりのある解釈の中に、私の伝えたかったことを皆様が的確に読み取ってくださっているのがわかりました。ありがとうございます。後半の票は、これらの評を読んだ上で入れた方が多いのではないかと思います。歌だけでは伝えきれていないことが、評に補完されて伝わった部分もあるのではないでしょうか。ありがとうございました。
 この歌は、点数がつかない「次選」の票が多かったのも面白かったです。歌としての突出した魅力は少ないけれど、スピードの遅い車に遭遇した経験を持つ方が多くて「あるある、こういうこと」と感じられたということかしら…。皆様もあちこちで出会っているのでしょうね、こういう「神様」に。

032:昏(文乃)

昏々と眠れる母の病室に言葉少なき父とわたしと

031:認(文乃)

電気、ガス、戸締まり 指差し確認は出かける前の小さな儀式

「うたの日」投稿作品(2015年3月)

2015.3.1「産」
金色の産毛纏ってふっくりとひかりの如く赤子は眠る

2015.3.2「冊」
一冊の絵本請われて何度でも子に読みやりし日々のぬくもり

2015.3.3「美味」
Webで知る誰かのレシピに支えられ今日も家族の「おいしい」を聞く

2015.3.4「素」
素描(デッサン)の時間を待ちて石膏像白く佇む美術教室

2015.3.5「ゴール」
鮮やかにゴールキックは蹴り出されフィールドに描く遥かな軌跡

2015.3.6「寒」
入試日が迫る 木々の芽膨らんで三寒四温で近づく春だ

2015.3.7「平」
平積みの新刊コミック待ちわびた一冊ぽっと光を放つ

2015.3.8「恥」
恥ずかしい思い出ばかり繰り返し上映される記憶シアター

2015.3.9「桜」
薄紅の花に包まれて誰も彼も子どもに還る春の飛鳥山

2015.3.10「理」
ぎっしりと定理や年号詰め込んで試験開始を子らは待ちおり

2015.3.11「福島」
初春の雪踏みしめて買いにゆく小法師の笑顔やさしき会津

2015.3.12「会」
また会おう 背を叩き合いいつまでも写真撮りあう十五歳(じゅうご)の春だ

2015.3.13「手袋」
心まで温まりそう 伝統の愛らしいミトン並ぶラトビア

2015.3.14「最初」
けひゃけひゃと笑う二歳児 たくさんの「はじめて」が待つ地平を生きる

2015.3.15「最後」
眠りへの小径につづく裏木戸を開けて待っている最後のひつじ

2015.3.16「青」
育花雨(いくかう)に洗われ伸びるさみどりに青紫の星がかがやく

2015.3.18「人」
現在(いま)というエッジの上に今朝もまた七十二億人が目を覚ます

2015.3.19「低」
順々に丈の低くなる長靴をお下がりしていく八本の足

2015.3.20「連」
解きかけの連立二次方程式に夏の終わりの風吹き抜ける

2015.3.21「太陽」
百万の小さな太陽咲き競いどこまでもどこまでも向日葵

2015.3.23「湖」
たっぷりといのちを抱いて古代湖は今年も春のみどりを映す

2015.3.24「鳥」
できるならわたしの一部を鳥にしてあなたの籠に飼われていたい

2015.3.25「ふたえ」
制服に重ねてつける白襟にぴしりとアイロンかける週末

2015.3.26「習」
習作(エチュード)を重ねるようにいくつもの淡い想いを描いては消す

2015.3.27「生」
室外機の下に芽生えた雑草の小さな葉にもいのちが満ちる

2015.3.28「泳」
水族館のロビーにさざめきゆっくりと泳ぎ去ってゆくにんげんの群れ

2015.3.29「月」
二ヶ月後あなたに触れる日のために指先に塗るハンドクリーム
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